相続税の申告事績(平成19年分)及び調査事績(平成19事務年度分)

国税庁から相続税の申告事績と調査事績が発表になりました。

相続税の申告事績(平成19年分)及び調査事績(平成19事務年度分)
平成20年12月
国税庁


今般、相続税に係る平成19年分の申告事績及び平成19事務年度に実施した調査の結果をとりまとめましたので報告します。


1. 申告事績の状況
 平成19年中(平成19年1月1日〜平成19年12月31日)に亡くなった人(被相続人)から、相続や遺贈などにより財産を取得した人に係る申告事績(平成20年10月31日までに提出された申告書で相続税額があるもの)の概要は次のとおりです(表1参照)。http://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2008/7323/01.htm#hyo1


ポイント
○ 相続税の課税対象となった被相続人は約4万7千人で、被相続人全体に占める割合(課税割合)は4.2%となり、平成6年以降での最低水準となっています(平成16年以降4年連続)。
○ 相続税の課税対象となった財産価格(課税価格)は10兆6,216億円、税額は1兆2,634億円で、前年よりやや増加しています。
○ 相続財産の金額の構成比は、土地が47.8%、現金・預貯金等が20.5%、有価証券が15.8%となっており、2年連続で土地の構成比が50%を下回っています。

※ 課税価格:相続財産額から被相続人の債務・葬儀費用を控除し、相続開始前3年以内の被相続人から法定相続人等への生前贈与財産額及び相続時精算課税適用財産額を加えた相続税の税額計算の基礎となるもの。


(1) 被相続人数は約111万人、このうち相続税の課税対象となった被相続人数は約4万7千人で、課税割合は4.2%となっています。
 課税割合は、基礎控除額の引上げ等があった平成6年分以降での最低水準(平成16年以降4年連続)となっています。


(2) 相続税の課税価格は10兆6,216億円(対前年比102.4%)、これを被相続人1人当たりで見ると、2億2,763万円(同99.2%)、また、税額は1兆2,634億円(同103.5%)、これを被相続人1人当たりで見ると、2,708万円(同100.2%)となっています。


(3) 相続財産の金額の構成比は、土地が47.8%(前年と同割合)、現金・預貯金等20.5%(対前年0.1ポイントの減少)、有価証券15.8%(前年と同割合)の順となっています。


2 調査事績の状況
 平成19事務年度(平成19年7月1日〜平成20年6月30日)における相続税の調査は、平成17年中及び平成18年中に発生した相続を対象の中心としており、国税局及び税務署で収集した資料情報を基に申告額が過少であると想定されるものなどに対して実施しました。
 調査事績の概要は次のとおりです(表2参照)。
http://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2008/7323/01.htm#hyo2


ポイント
○ 調査を行った13,845件のうち、85.8%で申告漏れが把握されました。
○ 申告漏れ課税価格は4,119億円、追徴税額は941億円で、前年よりやや増加しています。
○ 申告漏れのあった相続財産の金額の内訳は、現金・預貯金等が1,517億円と最も多く、高水準で推移しています。
○ 海外資産関連事案に係る申告漏れ課税価格は308億円で、前年の148億円を大きく上回り、過去最高となっています。


(注) 「調査」とは実地調査のことであり、被相続人宅、相続人宅、取引金融機関及びその他相続財産等に関係のある者に対して、臨場して行う調査のこと。


(1) 調査件数は13,845件(対前事務年度比98.5%)、このうち申告漏れ件数は11,884件(同98.5%)であり、申告漏れ割合は85.8%(前事務年度と同割合)でした。
(2) 申告漏れ課税価格は4,119億円(対前事務年度比101.0%)、これを申告漏れ1件当たりで見ると、3,466万円(同102.5%)となっています。
 また、追徴税額は941億円(同100.2%)、これを申告漏れ1件当たりで見ると、792万円(同101.7%)となっています。
(3) 調査に基づく申告漏れ相続財産の金額の内訳は、現金・預貯金等が1,517億円(対前事務年度77億円の増加)で最も多く、続いて有価証券707億円(同141億円の減少)、土地687億円(同13億円の増加)の順となっています。
※ 相続時精算課税適用財産の申告漏れ額は「その他」に含む。
(4) 海外資産関連事案については、407件(対前事務年度比111.8%)の調査を実施した結果、申告漏れ件数は334件(同114.4 %)、申告漏れ課税価格は308億円(同208.0%)となっており、これを申告漏れ1件当たりで見ると、9,227万円(同181.8%)となっています。
(5) 申告漏れの態様は、預貯金等の申告漏れや土地や株式等の評価誤りなど様々ですが、財産を隠ぺいするなどの悪質なケースとしては、以下のような事例が見受けられました。
 △ 現金や金地金等を自宅や貸金庫等に隠匿して申告から除外
 △ 被相続人の住所から遠隔地の金融機関の預金や不動産等を申告から除外
 △ 財産の所在が海外であることを悪用して申告から除外   等

相続税が課税される割合は、年々低下しており、昨年は4.2%となっています。
これは平成6年以降で最低の水準です。


また全国的な土地価額の下落に伴い、平成6年には70.9%もあった相続財産に占める土地の割合も、昨年は47.8%(前年と同割合)まで低下しています。
それに対して預貯金の割合は、平成6年の9.4%から倍以上に増加し、20.5%にもなっています。
同様に有価証券も、平成6年は8.3%だったものが、15.8%に増加しています。
こんなところにも経済や時代が反映されています。