税制改正に関する提言

法人税減税に関して話題をもう一つ。
経団連(社団法人 日本経済団体連合会)による「平成19年度税制改正に関する提言」は、9月25日に自由民主党税制調査会政府税制調査会等に提出することになっています。
経団連のみならず各業界団体等も、同じく9月25日までに税制改正要望書を提出することになります。


日本経団連の平成19年度税制改正に関する提言(平成18年9月19日)を紹介します。
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2006/065/index.html

平成19年度税制改正に関する提言概要
2006年9月19日(社)日本経済団体連合会


経済活性化による税収増大の流れの加速
視点
1.経済成長の維持、国際競争力強化の視点 ⇒ 新たな成長への投資促進、国際的整合性の確保
2.経済成長と財政健全化の両立 ⇒ 2011年の基礎的財政収支黒字化への税制面の道筋
3.「希望の国」の実現に向けた、中長期に亘る視点の重要性


法人税
1.法人税実効税率の引下げ: 国際的に見て高止まりの状態。企業活動の活性化の観点から実効税率引下げの議論が必要
2.減価償却制度の見直し: ①償却可能限度額(現行95%)の撤廃、②法定耐用年数の短縮等
3.国際課税: ①移転価格税制の運用改善②外国税額控除制度の見直し
4.合併等対価の柔軟化(三角合併)への対応
5.地方法人課税: ①地方財源としての法人課税のあり方の見直し②償却資産に対する固定資産税③地方法定外税の見直し
6.非営利法人課税・寄附金税制: 民間非営利活動を社会において積極的に位置づけるための抜本的な非営利法人(団体)課税の見直し、並びに寄附金税制の拡充
7.会計基準改定への対応: リース会計基準棚卸資産評価など会計基準の国際的コンバージェンスの動きへの適切な対応
8.その他: ①研究開発促進税制拡充②信託法改正への対応等③特定資産買換特例の延長④産業活力再生特別措置法関連税制⑤役員給与の損金算入⑥外航海運に係る法人課税


所得税ほか
1.証券税制: ①上場株式等の譲渡益・配当課税の特例の延長②受取配当金益金不算入制度の見直し
2.少子化対策: 扶養控除と児童手当を一本化し、「子育て税額控除」制度を創設
3.高齢者雇用促進対応: 60歳以上の者が受け取る給与所得控除へ「高齢者加算」制度を創設
4.年金税制: ①特別法人税の廃止②確定拠出年金税制の拡充③適年廃止への対応
5.エンジェル税制の延長・拡充
6.金融課税一元化の推進、社会保障番号の導入
7.印紙税の抜本的見直し


土地・住宅税制
1.総合的な住宅投資減税の導入に向けた早期検討
2.所得税から個人住民税への税源移譲により失われる住宅ローン減税効果の確保
3.社会的要請に基づく住宅リフォーム促進税制の導入
4.都市・地域再生推進のための措置ほか


環境税反対: 地球規模の課題である温暖化防止には、環境税は効果が無い


道路特定財源: 使途変更は受益者負担の原則から納税者の理解が困難。暫定税率の引下げや複雑な課税体系の見直しを進めるべき

その中から減価償却関係を取り出してみました。

減価償却制度の見直し


わが国の減価償却制度は、昭和39年度改正を最後に本格的な見直しが行われておらず、種々の見直しが行われてきた法人税制において残された大きな課題の一つである。景気回復をさらに力強く継続させ、今後の経済成長に結び付けていくためには、減価償却制度を国際的に遜色の無い制度に見直し、順調な企業の設備投資を促進させて産業の国際競争力強化を図っていく必要がある。


(1) 償却可能限度額の撤廃
わが国の減価償却制度においては、償却可能限度額が取得価額の95%に据え置かれているが、国際的に見て、取得価額の100%の償却を認めていない先進国は無い。取得価額の5%の簿価を残すという合理的な根拠は無く、むしろ、資産の除却時に、一時的に損失計上が余儀無くされることから企業の設備更新の足枷にもなっている。償却可能限度額は早急に撤廃し、100%の減価償却を認めるべきである。また、事業用償却資産に対する固定資産税に関しても、償却可能限度額の撤廃に併せた見直しが不可欠である。


(2) 法定耐用年数の短縮
わが国減価償却制度の法定耐用年数は、多くの設備において諸外国と比して長く規定されており、投資費用の回収期間において国際的に不利な状況にある。
そもそも、設備の使用期間は使用条件や改良の有無などで大きく変化することから企業ごとに千差万別であり、使用期間をもって償却期間の基礎とすることには無理がある。むしろ、税務上の償却期間は、設備投資の活性化や制度の簡素化といった観点から検討すべきである。
単に使用年数を基礎とした償却期間ではなく、国際的なイコールフッティングや経済の活性化の観点を踏まえて、法定耐用年数の短縮や償却カーブの見直しを図るべきである。併せて、耐用年数区分の大括り化や、耐用年数の短縮に係る手続きの柔軟化などを進めるべきである。

これに対し、9月上旬に政府税制調査会において委員に配布された資料は、内部の議論においてそれまでに出た様々な意見を並べたものであり、例えば耐用年数については経団連の要望とは逆に、「実際の耐用年数より大幅に短いことをどう考えるか」とする意見がありました。

減価償却制度


○ 減価償却制度は、期間損益を適正に計算する観点から償却資産の取得価額を試用期間にわたって費用配分するもの
○ 償却可能限度額について、国際的整合性の観点から、耐用年数経過後も使用している場合には備忘価額に達するまで償却を認めるべき
○ 法定耐用年数や簡素・柔軟性について検討すべき
○ 現行の法定耐用年数は実際の耐用年数より大幅に短いことをどう考えるか
○ 減価償却制度については、全ての業種に関係し、課税所得の学に大きく影響することから、償却資産の使用実態や諸外国の状況について広範かつ十分な調査を行う必要
○ 生産設備の新陳代謝を促進する観点や財政への影響に配慮することが必要
○ 減価償却資産の見直しは、抜本改革の中で総合的に行う必要


政府税制調査会の資料より


立場が異なることから、まったく異なる意見があります。


確かに、耐用年数については議論を重ねる必要がありそうです。
自動車(乗用車)の耐用年数は6年ですが、実際には6年を超えても使用可能です。
貨物トラックは4年ですが、運送事業者でも10年くらい使用します。
パソコンは企業だと使用頻度も多いので壊れやすいのですが、個人だと未だにWindows98という方もおられます。
要するに、使用頻度・使用状況によってまったく異なってくるのです。


最終的にどのような改正内容になるのか、注目してみたいと思います。